危機をチャンスに変えたアイデア、シンガーソングライターのチョ・ジュンホ
コロナ禍以降、相次いで公演が中止になるニュースを耳にするたびに、残念な気持ちになったことは一度や二度ではありませんでした。公演の準備を進めていたアーティストたちは、どのような心境だったのでしょうか。この状況が続く中で、ステージに立てないという悔しさだけでなく、音楽活動を続けていく力を失いかけていたのかもしれません。
しかし、こうした厳しい状況の中でも、まっすぐに自分だけの道を歩み続けるメイカーがいます。 これまで発表してきた旅をテーマにした歌を、限られた観客に意義深い形で届けたシンガーソングライター、チョ・ジュンホ・メイカーさんの物語です。新しい形の公演を企画し、クラウドファンディングでフルアルバムの準備に至るまで。 危機をチャンスに変えたアイデア、自分だけの旅路を黙々と歩み続けているメイカーさんの物語をご紹介します。
「こんにちは、シンガーソングライターのチョ・ジュンホです」
私は『音楽で綴る紀行文』というプロジェクトを通じて、旅をテーマにした音楽をお届けしているシンガーソングライター、チョ・ジュンホです。『アコースティック・ブラザーズ』、『バード』、『好きだからやるバンド』、『ハリムのアフリカ・オーバーランド』といったバンドを経て、3年前にソロ活動を始めました。
プロジェクト名の通り、これまでに計9曲の旅をテーマにした曲をデジタルシングルとして発表し、現在は最後の10曲目を制作中です。全10曲をまとめた絵本形式のフルアルバムを、wadizのクラウドファンディングで準備しています。

単に旅行が好きだからといって、フルアルバムの題材にしたわけではありません。私も最初は、もっと多くの人に私の歌に共感してもらいたいという思いから、歌詞だけに集中して聴いてもどんな曲なのかが分かるような曲を書いたんです。
ソロ活動を始めてからずっと、旅についての話をしたかったのですが、旅行記という形式では、むしろその場所を旅しながら感じた自分だけの感情を語るほうが価値があるのではないかと思うようになりました。同じ場所を旅しても、人によって感じる感情は異なるものですし。 そこで、旅で感じた自分の感情に焦点を当てて曲を作り始めました。
仕事の性質上、地方や海外へ公演に行くことが頻繁にあるんですが、ある意味では私にとって旅行ではなく仕事である場合が多かったんです。それでも、見知らぬ場所や新しい人々を通じて得られる様々な経験のおかげで、題材を得ることができました。ある瞬間には、旅行として感じようと努力したこともありましたけどね。(笑)
「危機をチャンスに変えるきっかけになりました」

コロナ禍以降、1年以上も公演ができなかったんです。そうしているうちに、公演に対する感覚も鈍り、生計に対する不安も生まれ、途方に暮れていました。そんな状況で、公演を続けていく方法はないかと悩んだ末に生まれたのが『5seats』です。観客5名をお招きし、私の作業室で2時間にわたり、「音楽で綴る紀行文」シリーズに収められた歌と物語をお届けする企画です。
2020年11月から2021年9月まで計36回開催しましたが、このシリーズに収録された曲のボーカル録音は、このアトリエで行ったんです。私の歌を聴いて公演を見に来てくださった観客の皆さんは、その曲が生まれた場所でライブの歌声を聴くことになったわけです。

ささやかな欲かもしれないですが、この紀行文シリーズの最後は、特別な旅先ではなく、 私が今いるこの場所についての話で締めくくりたかったんです。結局のところ 、元の場所に戻るために旅に出るわけですから。そこで、最後の曲のタイトルを『ソファの旅人』と名付け、公演に来てくださった観客の皆さんもソファの旅人になってほしいという思いから、曲の背景となった場所の写真や映像も一緒に披露しました。
私と一緒に今座っているソファから、新たな旅へと旅立つことになるのです。そして、この公演に関する感想文をいただき、「ソファの旅人」の歌詞を書く際に活用しました。5seatsの公演を共に過ごしてくれた、すべての「ソファの旅人」たちの曲が出来上がったわけです。
公演の感想を元に曲を完成させるという話は、最初から話していませんでした。公演への感動が残っている状態で、実はこの公演がもっと大きなプロジェクトの一部であることをお伝えしたかったからです。 予想通り、その言葉を口にした瞬間、観客の皆さんは面白がったり、不思議がったりしてくれました。そのせいか、他の公演とは違って多くの感想を残してくださったんです。こうした感想のおかげで、私の想像力を広げるのに大いに助けられました。今後、「ソファの旅人」という曲が公開された後の観客の反応も気になりますね。
「自分のプロジェクトを最もよく説明してくれるポートフォリオを手に入れました」

『音楽で綴る紀行文』、『5seats』、『ソファの旅人』は、先ほどお話しした通り、ソロ活動を始めてから3年間続けてきた私だけのプロジェクトです。そのため、どうしても話が長くなってしまいました。クラウドファンディングの準備中にストーリー作成に苦労した理由もそこでした。(笑)
自分で読み返しながら、つまずく部分がないか絶えず確認し、修正を重ね、周囲からのフィードバックを受けて文章の構成も何度か変更しました。特に知人たちから「君の話は全部分かったけど、だから私がなぜここにクラウドファンディングをしなきゃいけないの?」という鋭い質問をいただき、今のストーリーを完成させる上で大きな助けになりました。
このように辛い瞬間もありましたが、結局このストーリー自体が、私が手掛けたプロジェクトを最も正確かつ強烈に表現するポートフォリオとなりました。従来のように自費でただアルバムをリリースしただけでは、このようなポートフォリオページは得られなかったでしょう。誰かに私が成し遂げてきたこの3年間を見せなければならない時、このページ一つで十分になりました。クラウドファンディングでアルバムを制作してよかったと実感した瞬間でした。

クラウドファンディングが成功裏に終了すれば、イラスト入りのガイドブック形式でアルバムを手に入れることができます。私のアルバムを単にCDの形でリリースすることもできたのですが、5seatsの公演を行ううちに、もっと欲が出てきました。歌と物語を一緒にアルバムに盛り込みたかったんです。そこで、CDではなく本の形で作ってみようというアイデアが浮かび、この紀行文シリーズを聴くことになる人々のために、ガイドブック形式が良いだろうと思いました。旅の物語を案内するような形で。
そうして、以前からご縁のあったボンヒョン作家のイラストを、歌に合う挿絵として追加し、絵本形式のガイドブックを企画しました。最初にアルバムを考えた時からこの形式を念頭に置いていたわけではありませんが、自分の考えを一つひとつ追っていくうちに、良い作品へとつながったのだと思います。

ガイドブック・アルバムのほかには、新しいシーズンを迎える5seatsの公演にお申し込みいただけます。今回のクラウドファンディングで特別に実施する「 全国どこへでも出向くアンプラグド・コンサート」を体験することもできます。マイクやアンプなどの機材を使用しないため、普段私が受け取る公演料の半額程度の金額で実施されます。 公演を必要としていた方々にとっては良い機会になると思いますし、私にとってもアルバム制作費を捻出できるリワードの一つなので、大きな助けになりそうです。私はストリートライブから音楽を始めたので、自分の強みを活かしたリワードだと言えるのですが、多くの方にご応募いただいていて、とても嬉しく思っています。(笑)
「自分の物語に対する確信を持って始めてください」
クラウドファンディングを開始した当初は、自分が何もせずとも自然とうまくいくと思っていました。でも、そうではなかったんです。知人たちに積極的に宣伝もしなければなりませんし、サポーターの方々の反応も注意深く見極めなければなりません。そのためには、まず自分のプロジェクトに対する確信と信念が必要だと考えています。
wadizは自分のストーリーを伝え、そのストーリーに共感してくれる人を集める手助けをしてくれるありがたいプラットフォームであることは間違いありません。でも、私を全く知らない方々がクラウドファンディングで気軽に力を貸してくれるというのは、実は簡単ではないんです。ですから、まずは周囲の知人から始めて、その人たちに共感してもらえるプロジェクトかどうかを考えてから、クラウドファンディングに挑戦してほしいと思います。自分の周りの人々をまず動かせそうなプロジェクトであれば、wadizでさらに相乗効果を生み出せると思います。
wadizは、サポーターに私の近況を継続的に伝えられる場でもあります。実は、自分のプロジェクトを公開する前にサポーターとしてwadizを利用していたのですが、2年前にクラウドファンディングを行ったメイカーの近況を今でもメールで受け取っています。それを見て、今回のクラウドファンディング後に新しいアルバムや単独コンサートの予定ができたら、サポーターの皆さんに手軽に知らせることができるだろうと思いました。すでに私を応援し、サポートしてくださった方々と強固なネットワークが築けたようで、クラウドファンディング終了後も大いに役立つと思います。
「想像だけだったアイデア、皆さんと一緒だからこそ実現できました」
クラウドファンディング終了後は、曲のどの部分をイラストにするか、ボンヒョン先生と話し合い、文章と原画を配置する作業が進められる予定です。そして、その文章と原画を最も効果的に伝えられる紙の質感やサイズなどを決めるつもりです。
こうして話していると、私一人の力では想像するしかなかったアイデアを、クラウドファンディングのおかげで実現できるという事実が、本当に胸がときめきます。世界で一番美しい絵本アルバムが完成するよう、最後まで一生懸命取り組むつもりです。

今回のきっかけで、多くの方々からの関心と応援をいただき、これまで以上に責任感を感じています。私の夢を応援してくださる方がこれほど多いという事実が、私を幸せにしてくれます。
実はこのアルバムは、誰よりも私自身が本当に手に入れたいと思っているものなんです。 (笑)だから、自分自身にも、そしてこのアルバムを受け取ってくださる方々にも恥じないようなアルバムを作ります。サポーターの皆様の心にもすっと入るようなアルバムを作って、必ずお返ししたいと思います。今回のアルバムと公演を無事に終えた後、私を応援してくださる皆様を納得させられるような良いアイデアがまた浮かんだら、クラウドファンディングでまたお伺いします!
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